新天皇皇后のご成婚は1993年である。あの頃の日本はまだまだ古かった。
さっそうとスーツを着て出勤する、自称”キャリアウーマン”は、会社のロッカールームで女子だけにある制服に着替える(えっ、今もある? びっくり)。
会社に勤めても、ある程度の年齢までに結婚退職しないと、”お局様”になってみんなから嫌われる……、という「洗脳工作」が盛ん(これはもうないかな)。
「総合職女性にもお茶くみをさせるべきか」なんて話が真面目に議論されていた。男性は何職であろうが最初から排除されている。
何もかもが日本特有の本音と建前の世界で、女性も一般的には、男性を凌駕しない「カワイイ人」が支持されていた時代である。
皇太子(当時)より、
三高だった雅子さま
雅子さまは皇太子(当時)より、三高だった。
三高と言っても、すでに知らない人も多いかもしれないが、バブル時代に言われた女性からの男性選びの基準で、高身長、高学歴、高収入である。
1.まずは高身長である。
公式発表では当時の雅子さまが164センチ、皇太子が163センチである。この世代では、雅子さまは女性としては高いほうである。
2.そして高学歴である。
雅子皇后はハーバード大学卒、外務省入省のため東大中退。陛下は学習院大学博士前期終了。海外の大学は進修でとくに学位はとっていない。どっちが上、というようなものではないが、雅子さまのほうが華々しい気がする。
3.高い語学力をお持ちである。
そりゃ、帰国子女の雅子さまのほうが”できる”でしょう。しかもドイツ語、フランス語もOKである。
苦労して中国語を学ぶ過程でおもったが、たとえ帰国子女でも「読み書き」は自分でどこかで勉強しないかぎり身につかない。ただ会話は、子供のときにその環境にいてある程度話せるとまったく違う。
海外では三高女性は、
高評価
さて、海外(中国)に暮らして18年目。
世界では(特定の宗教エリアは別として)、多くの地域で女性にもいろんな面で”高”を要求し、評価する。とくに中流以上はその傾向が顕著である。
自分の妻が何かのプロフェッショナルであることも、男性の自慢である。ま、その半分ぐらいは、やっぱり「こんな女を嫁にできるオレ様」自慢だが。
ルックスというか、押出しもあるほうが有利で、背は男女ともに高いほうがいい。商社などは昔からある程度、好印象(イケメンとは限りません)の人を海外に送り込んでいた。
習近平も身長でトクをしている。
さらにカワイイより美人が評価、の傾向が高い。海外の"リカちゃん人形"は、皆、大人っぽいのである。
女性の学歴やキャリアも非常に大事。
中国も社会が安定せず、夫婦で生き抜く、が前提だから、妻の社会的能力は大事なのである。公務員試験で妻の学歴や職歴を履歴書に書かせているのを見たことがある。
たとえば扇千景さん。大臣で中国に来た時に、「歌舞学校出身の人だから」と言っていた政府関係の中国人がおり、ああ、宝塚のことか、と衝撃を受けた。日本ではブランド価値があっても世界では、単に中卒、高卒女子の歌舞集団と見られてしまう。
彼女の訪中時、中国からの扱いはけっこう雑で、影響しているのかな、とおもったことがある。
語学力も、結局、天皇家の二人とも”帰国子女”と結婚されている。それぐらい、究極の外交当事者としては身にしみるものがあるのだろう。
中国で評価の高い
雅子皇后
ちなみに今、中国で雅子皇后の評価は高い。
ハーバード、東大、外交官というキャリアは中国人の大好物でもあるし、ウエイボーの皇室がらみの話題の検索で一番人気は、#日本新皇后#である。
閲覧は6億を超える。
余談だが日本で時々見かける、中国でも高学歴女性が余り者になっている、という記事は、ウソである。
中国では20代、30代の女性の数が男性より少なく、さらに大卒女性となると激減。女性も自分と同じクラスを求める中国の男性からすると人気で(かつ高学歴女性は都市戸籍の人が比較的多い)、余っているのは、基本的に農民の男性、妻のランクを落とせない大卒の男性である。
男女ともに都市部の高学歴が結婚しないは話題になるが、中国の記事では剩男剩女と併記されており、それが日本語に翻訳されると「剩男」が意図的に落とされている場合をけっこう見る。
おそらくは日本の男性メディアに忖度させられたのだろう。
そんな日本で、おふたりが天皇陛下、皇后陛下に即位されて、あらためて雅子皇后を好きになった天皇陛下を見直した(!)。
責任感の強い方だったんだなとおもった。
徳仁天皇陛下はある意味、誠実で不器用な(とお見受けします。スイマセン)ご自分をよくご存知だったのだと思う。
将来は100%確実に天皇になるのである。そして仕事は”日本の象徴”ということは、国内に向けての象徴でもあるが、それをアピールする場は日本以外の国々であり、超超超グローバル、究極の国際職である。
人は、自分に利を与える人に魅力を感じるそうである。
一目惚れされたのは、雅子さまが自分になく、かつ補うものを持っていたからかもしれない。
三高を活かせなかった
今までの皇室
しかし残念ながら、その雅子さまの三高を今までの日本はうまく活かせなかった。
皇室外交でも活躍できる、と徳仁天皇が口説かれたのは有名だが、私が最初に違和感を感じたのは、婚約発表のときの雅子さまのファッションだった。
それまでのよく似合っていたキャリアウーマンファッションから、一転して型にハマった『皇室ルック』。
会見の「自分の言葉で付け加えますと」のたった一言で、早くも袋叩きにあう始末。
海外からは、それでなぜ叩かれるかは意味不明だろう。
そして、その後の様々な報道。
私はいつも思うのだが、「男子を産んでえらかった!」発言も、「男子でめでたい!」新聞の号外も、噂に聞く「次はがんばって男の子ね」のクソ出産リプも、産んだ”女性”であるママにも女児にも、日本中の女性に失礼である。
こういうセリフを言うのは男性とは限らないのが、日本の病理の根の深いところ。
日本は女性も、ミソジニー(女嫌い、女性蔑視)をかなり取り込んでいる国である。
中国人たちもsnsで、
「雅子さまは外交官の卵で新時代の女性だったのに、結婚したとたんにいじめられて。美智子様だって資本家のお嬢様だったのに姑さんと宮廷の規則で苦しめられて言葉を失って……」
その他、皆さん、なぜそんな日本の皇室に詳しいんですか、と思うほど、いろんなことをよく知っていて話題にしている。
中国も昔は社会の基本潮流に男尊女卑は根強くあった。貧しい地域に多く、一人っ子政策で、農村部の一部では、第一子が女児なら二人目も産んでいい、などという究極の男女差別の規定もあった。
しかし一方で昔から大きな格差があり、比較的実力主義の国で、日本人とはもともと女性に対する考え方そのものがだいぶ違う。それは恵まれた層だけではない。今は全体がずいぶん変わった。
今回の天皇陛下ご交代、実は最初はあまり関心がなかったのだが、中国から一連の行事を見ているうちにやはり日本人にとっての天皇の重さを感じた。
儀式なんて、と思うほうなのだが、上皇さまご夫妻のご近況のニュースを見て、あ、やっぱり日本の何かが、ちゃんと天皇皇后両陛下に移転している、と感じた。
多くの日本人の思いと同じく、どうぞご無理なさらず、ゆっくりスタートされればと思っている。
◎ 日本でも中国でも女性の思いは同じ。
ハイスペ女性を嫉妬でつぶす人は、日本をつぶしているのと同じ。 https://t.co/akmnXZKgeI
— 谷崎光@作家×北京在住19年目×中国記事PVNO1 (@tanizakihikari) 2019年5月1日
◎イラストのコメントの「私は登山が好きなんじゃなくて、雅子と一緒に登山するから楽しいんですよ」の言葉は、下の記事から引用。
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