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北京20年目の作家・谷崎光が中国とアジアの本当”をお伝えします。ときどきゲストも!

トヨタ社長の終身雇用限界発言で考える、中国人を味方にするたったひとつの方法

中国に来て18年間、社内の中国人が味方になってくれずに、日本企業が損をする例をたくさん見てきた。

 

たとえば中国で売っていた日本メーカーの携帯である。

2000年代はなんと中国語が打てず、表示が英語だけのものまであった。

当時、英語がわかる中国人は本当に少なかった。なのに中国人は誰も製造を止めず、もしくはどの段階でも止まらず、製品化されてしまっていた。

 

 今でも同じような例はけっこう見かける。

たとえば、某日系企業の大手ECの中の自社ショップ。

包装が悪くて、届いたときはつぶれているというクレームが、写真とともに、コメント欄に1年ぐらい大量に上がり続けていた。

私が見たところ、ヤラセとか嫌がらせではまったくない。お客さんたちはその商品が大好きで、でもこれは困るーという感じである。

 

でもその会社の日本人たちはまったく知らなかった。

 ECサイトは中国人に任せきりで、しかもその社員たちがやる気がないのである。

簡単に改善できるのに。

 

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北京のセルフレジのコンビニで精算する中国人たち 筆者撮影

味方につけるために中国人を知る

 

大変な損失で、こういうことをなくすためには、まず中国人を知らねばならぬ。

 

①本音は言わない。

 

「この企画どう思う? 」

お給料が一緒の場合、それが成功してもしなくても、いいですね、すばらしいですね、しか言わないことが多い。

中国社会はリスクが多く、本音を言うと損することが多かったのである。日本もそうかもしれないが、そのレベルが違う。

 

➁日本語のできる中国人は、一般の中国人とは違う。

 

彼ら彼女たちは非常に日本ナイズされている。

一般の中国人よりアグレッシブではなく、安定指向である。

 先日、日本企業に就職したい、という女の子にあった。

「ワタシの好きな日本食は、筑前煮です」

 

寿司でもカレーでもなく筑前煮。

ウケたが、そこまで日本が好きだと、日本語はうまいけれど、マーケット感覚は一般の中国人の若者とはだいぶ違ったりする。

 (中国でわざわざ「日本」を選んで語学を学んだ中国人とは違い、たまたま日本で育った華僑の子弟などは別だが、これも個人差がある)

 

③同じ会社の日本人をよく見ている。

 

昔から言われてきたことだが、中国人はつねに情報交換をしている。さらに人を見る目が非常に正確。

 

仕事をさぼったりなんかすると、運転手さんとさぼり先の場所の中国人からすぐ情報が流れ、社内の中国人の誰もが知っている。

 

 

そういう中国人をどうやったら、味方につけられるか

 

 答えはひとつ。成果を出したら、連動で報酬を渡す、である。

 

彼らはその渡したお金の何百倍も成果をあげてくれるだろう。逆に分配がなければ働かない、というか本気出さない。

 日本人だって、安定している会社では仕事するフリ社員が蔓延しているのだから、不安定な立場にいる彼らからすれば、それより副業に励むのが”合理的”なのである。

 

 

日本の会社は、まだまだ年功序列の部分が多いため、この感覚がつかみにくい。

中国人は会社に勤務していても自営業者である(実際社員として、”契約”で雇用しているのである)。

 

人は相手のほしいものではなく、自分がいいだろうと思うものを相手に渡しがちである。

 

 しかし中国人は、日本人とは、物の考え方も受け取り方も違う。

中国に来た時に、中国人てなんでもかんでも質問するのでうるさいとおもった。

しかしだんだんわかってきた。

 

多民族国家、13億いる多様な人々と暮らす彼らは、人は自分と一緒と思っていない。察することができると考えていない。だから聞くのである。

 

日本は察する文化である。そしてそのまま中国人を察するのだが、だいたい外れている。

 

ここは報酬を渡すべき、というときにやたら高い日本料理店に連れて行ってお礼をした気になったり、日本旅行での案内先が外していたり。

 

 中国人は自主性が高い人々である。

どうせ理解できない日本人が「察する」ではなく、基本的にはなんでも自分たちで決めてもらうのがいいのではないかと思う。

 

日本は成果主義でなかったので、長い間経費が使えることを褒賞がわりにしてきたところがあった。

これは経営側からみると、けっきょくその方が一時的に安上がりだからだが、従業員も雇用の安定とセットで受け入れてきた。

しかし中国社会はそうではないし、現地での日系企業の雇用も違う。

 

 

中国は変化が激しく、どんな大きな会社でも10年後あるかどうかは定かではない。

ましてそこへ進出した外資である日系企業は、イチ担当者がどうがんばっても、撤退するときは撤退するし、また中国人も遠慮なく移動していく。

 

割り勘は、船乗り同士が外国の港で飲むときに生まれたシステムだそうである。

もう二度と会えないかもしれない。貸し借りなしその場で精算。

もちろん中国の他国の外資や中国系の中国人社員も、実際は待遇に満足せず、仲間を引き連れて独立する場合も多い。

 

しかし急成長の中国IT企業などは、基本、成果主義である。

中国で出世できる人は、利益の分配のうまい人だそうである。

 ユニクロも中国で大成功の原因は、中国統括の中国人代表への成果主義が大きい。

 

日本もトヨタの社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言をしたことで、終身雇用の本格的な終わりが見えてきた。

日本でも”後払いの約束”は成果をうまなくなってきているのである。

 

このときに、

「わかりました。ではそうならば、がんばって成果を出した分はそのときにくださいね」

といえる日本人社員はどれだけいるのだろうか。

 

 

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