「オレ、スマホ新しくするから」
「またぁ? 外れるよ」
中国・北京。巨大ショッピングモールの中で、若者数人のグループが盛り上がっている。
一人が近づいて、スマホで支払いをした。
ガタンと音がして、プレゼント仕様で包まれた箱が出てくる。
皆で大騒ぎしながら箱を開けると出てきたのはシャンプーだった。
がっかりする青年……。
「同僚はこないだ、本当にスマホ当たったんだよ! いいよ、オレ、運を他に使う!」
皆で爆笑し、もりあがっている。
自販機の名前は、『ラッキーボックス』。
今、中国ではやっているのがこういう射幸性、またはゲーム性のある自販機である。
百花繚乱の自販機
数年前に北京で飲み物の自販機を見かけたと思ったら、あっという間に種類が増えた。
今はこういう生花を売るものまである。
花はちゃんと定期的に入れ替えられている。
薬販売からマスク専門、食品、日本では食品衛生法の関係でぜったい不可な生ジュース絞りまで本当に多種多様にあるが、その中で、着実に数を増やしているのが、こういう「当たりもの系」「ゲーム系」のものだろうか。
中国の自販機は最初から大型パネルがついていた。
なぜかというと当時の自販機NO1のベンチャー、友宝の創始者の青年が、「オフィスにおけて、ネットに繋がるゲーム機を開発したい。ゲーム機は会社はダメだから自販機にする」という発想で開発したからである。
初期は、なぜ自販機に? の大型パネルで、さまざまな割引もおこなっていた。
そして今は当初の目論見通り本格的なゲームや、広告のスペースになっている。
そしてここ一年ぐらいよく見かけるのが、この口紅の自動販売機である。
この自販機の大型パネルは広告だが、ゲームになっているものも多い。勝てば勝つほど、高い口紅が選べたりする。
外から見るとわからないのだが、実は中国の自販機の多くは、日本の自販機メーカーの中国の工場が作っている。シェアは2017年で中国全自販機の7割だった。
北京の地下鉄で見かける友宝というメーカーの飲み物自販機はほぼそうである。
今は中国の自販機自体が多様化しており、中国メーカーももっと参入している。
2017年に、中国の自販機事情を取材したおりに、関係の中国人たちいわく、
「ルーレットなどがついたものがいい。中国人はそういうことが好きなんだよ」
と、言っており、実際、すぐに液晶パネルにルーレットがあるものが開発されていた。
そしてそれが今は進化して、初期、ベンチャー創業者ののぞみ通りに本格的なゲームのついたものや、先にあげた福袋的なものも出てきたのである。
中国人は柔軟である。
そしてもし冒頭の、福袋自販機でスマホが当たったら……。
ハイ、これは中古携帯引取”自販機”である。
携帯を入れ、査定が済めば、逆にお金が出てくる。
中国は日々進化しているのである。