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北京20年目の作家・谷崎光が中国とアジアの本当”をお伝えします。ときどきゲストも!

日本人留学生が驚いた、このままでは日本が負ける中国の一流大学の授業

 

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中国の大学の卒業式は6月、7月。写真は北京大学。筆者撮影。

 

北京では、ときどき日本人留学生、日中ハーフ留学生と社会人の交流会が開かれています。

なかなかおもしろくて、何度か参加しています。

そのときに大学生たちが留学の感想を教えてくれました。

仮にA君としておきます(A君は数名を複合した仮の人物です。ただし発言そのものは全部本当です)。

 

■つぎつぎ登場する、

■教授の間違い指摘の学生

 

Aくんは学部生として、

中国人学生と一緒に授業を受けています。

 

で、教授が授業をしていたとき、中国人学生が突然、立ち上がりました。

「先生、それ間違えてます! 本当はこうじゃないですか!」

 

そして学生は、前に歩いていくと、教授の板書を訂正しはじめました。

先生は怒るどころか、 ニコニコしてさらに学生の自分の考えの発表を促します。

 

 

するとまたひとり、別の学生が立ち上がりました。

「もっといい方法があります。こうです」

今度は前の板書の上にさらに上書きします。

 

先生は、学生の積極性がうれしくてたまらない表情だったそうです。

 

「ありえないですよね。日本だと年上に潰される」とA君。

 

たしかに……。

 

私は自分が北京大に留学していたときの、先生の発言を思い出しました。

「前、ある日本人留学生の名前を呼び間違えてたんですね。で、半年たったある日、彼はやっと、先生、実はそれ違うんですと。すぐ言えばいいのに、日本人はどうしてあんな遠慮するんですか? 」

 

「……」

 

 

日本人は学校でも会社でも”上”のいうことに基本、反論はしない。

中国人も、媚び媚びのときもあるけれど、まあムダな遠慮はしない。

会社でも、上がけっこう部下に気を使っていることも多い。成果主義&転職社会なので自分の成績を上げてくれる部下は大事にします。

 

■高給取りの

■一流大学教授たち

 

「あと先生たちのやる気が、日本とまったく違います。日本だと、先生は自分の研究がしたいって感じです」

 

 ふむふむ。

 まあいろんな先生がいるでしょうが、たしかに中国の先生方は熱い。

 

 中国の大学は、基本が全寮制で、以前は(今も?)先生も家族で学校の中に一緒に住んでいて学生との関係は濃いし、また授業ももりあがります。

 

 私のいた時代の北京大学だと、人気教授の授業は窓の枠までいつも人が鈴なりでした。他校からも聴講にくる。

 先生が助手を連れて教室に入ってくると、拍手と歓声でコンサート状態。お硬い金融の授業だったんですが……。

 

さらに中国の一流大の先生は、学部によりますが、お金持ちのことが多い。

特に理系は国や企業からの研究費、助成費も潤沢です。自分で会社をやっていることも多いです。

中国の大学は、昔から”大学企業”をもってましたが(北京大でも○○先生は研究者気質で経営がヘタ! とか”悪口”を言われてました)、今だとITイノベーションで、さらに企業、国、大学の関係は密接になっている。

 

清華大学北京大学の近くは、インキュベーションエリアになっていて、顔認証のトップ企業などが集約している……。

実は中国、怖えー、でもあるんですが、このへんの話はまた別に。

 

たしかドローンのDJIも、初期、創業者の青年が資金がなくて苦労していた時、香港科学技術大学の教授が真っ先に投資したり、資金集めを手伝ったりしています。

教授は、創業者の大学時代の先生です。

 

しかもブランド大学なら、日本人の理解を超える優遇もある。

先日、お会いした清華大学の某教授いわく、

「私なんか清華大学では収入は低いほうです。いろんな優遇はあるけれど(日本円で)年収が1200万円以上だと、税金がかかる。しかし一向に通知がないから、私は自分で税務局に行きました。すると役所の人が、”あなたは清華大の教授だから税金は払わなくていい”と」

 

……人治国家ですね。

まあ、この人から取っちゃうと、もっともらっている人からも取らないとダメになるからかもしれません。

 

北京大学

■学生起業支援センター

 

昨年、安倍首相が北京大で講演したので、私も久しぶりに母校、北京大学へ行きました。

 

で、取材が終わって、外に出ると、昔はなかった学生の起業支援センターがあった。

 

中に入ってみると、

すり鉢式の教室で、白髪の女性外国人教授が授業の準備をしている。次々集まってくる女子学生たち。

 

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北京大学。「グローバル大学生起業イノベーションセンター」内の授業。

スマートなカフェでは金髪の外国人留学生と中国人学生がパソコンを開いて、一緒にビジネスの相談をしている。

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中国人は割と欧米人が好きで、

こういういかにも先進的なキャンパスの風景というのは、彼らの憧れでした。

昔はよく”金髪”の外国人学生を使って、こういう風景を演出し、写真を取っていた。

 

それが今は全部”本当”になっている。

 

別に中国の大学を美化するつもりはありません。

こういう人工的な設備から、起業が生まれるかどうかもわからない。

北京大でもセクハラ問題隠蔽がニュースになっていました。

そもそも大学自体が党の管理下に置かれています。

いわゆる学生会長でも、”背景”(親が共産党関係者)がいるとか、中国特有の問題もいっぱいある。

 

それでも日本とは何かが違う。

 

 

■就職してどうなる

■日本のグローバル学生

 

 交流会には、某大手企業の人事部の30代の人も来ていました。

”グローバル学生”からは、憧れの会社でもあり、A君たちも一生懸命、接触を図っています。

 

しかし30代人事の男性は、お酒で気が緩んだのか、吐き捨てるように、

「中国人女を採用したら、働いたとたんに妊娠しやがってよー」(100%発言ママ)

と言っています。

 

マタハラについて、私、常々思うんですが、出産適齢期の女性の給料なんて、年功序列の日本だと高くない。日本の会社には、お腹が大きくならないだけで働いてない高給のおっさんは山程おるやろ。

その女性は出産はするかもしれないけれど、数年のレンジで見れば、昔の名残で中国にいるだけおっさんよりはるかにパフォーマンスをあげるかもしれない。

 

社員が二人、三人の零細企業ならまだわかる。

だけどあんたの会社の屋台骨がゆらぐわけでも、あんたの給料が減るわけでもないのに、なぜ、そんなに女嫌い? 

ちなみにこの会社、駐在員は多いが中国では全然儲かってないそうです。

 

しかしA君たちは、”日本の板書”に上書きはしない。

海外で自由闊達を学んだ学生は、日本企業でどうなっていくのか。

 

 

春。

各日本企業の皆様におきましては、自社と日本の生き残りをかけて、

ぜひ若者の”板書に上書き”を受け入れてほしいのです。

 

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春の北京大学

 

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